ファンデーションとディプロマのパスウェイ
この項目では日本ではあまり聞き慣れないオーストラリアのファンデーション・プログラムやディプロマ・プログラムについてご説明します。
ファンデーションイヤーや大学入学準備コースとして知られるファンデーション・プログラムは様々な形式を取っていますが、基本的にオーストラリア以外の学校を卒業した留学生のための大学進学条件を満たす代替ルートと言えます。この代替ルートは自国の学校卒業資格ではオーストラリアの大学学士コース入学条件を満たせない留学生の最も一般的なパスウェイとなっています。このファンデーション・プログラムは基礎教育機関(高校)、VET(TAFEや専門カレッジ)、ELICOS(英語学校)、高度教育機関(大学)で行われています。
ファンデーション・プログラムには、特定の大学のための私的機関で行われているもの、正規な資格(通常はサーティフィケート4)を発行するもの、正規な資格を発行しないものなど様々です。
ファンデーション・プログラムは主に下記のような特徴があります。
● 学問的(専門的)な科目が含まれている。
● 英語習得に焦点を絞っている。
● 入学条件として11年生(日本で言う高校2年修了または同等のレベル)修了とIELTSテストスコアが5.5以上(またはTOEFLで等々のスコア、ケンブリッジ検定CAEまたはPTEレベル)を基準とする。
● オーストラリア12年生の高校修了と同等レベルを基準とした内容を行う。
● 通常1年間のコースである。
● 学生が規定条件の成績を収めた場合に、特定大学のコースへ入学が保証されることがある。(しかし、ファンデーション・プログラムで大学の単位を取得することはできません。)
ファンデーション・プログラムの中には「エクスプレスコース」または「特別集中コース」と呼ばれるような1年以内のコースも見られます。これらの短めのコースはすでに12年生を修了しているか、IELTS6.0以上のスコア(または同等の英語力を証明するTOEFL、ケンブリッジ検定等または特定教育機関の英語力証明)を取得していることが条件とされています。
※ この英語力証明についてはファンデーション・プログラムを行っているそれぞれの教育機関によって条件が異なりますので、教育機関に問い合わせる必要があります。
また、一方では留学生の英語力によって英語力養成期間を加えた1年以上のファンデーション・プログラムを設定している場合があります。このような長いコースは「Extendedプログラム(延長プログラム)」と呼ばれることがあり、留学生の英語力が少し低い人(通常IELTS5.0、TOEFL Paper 500、TOEFL iBT 64またはTOEFL computer180といったレベル)を対象にしています。
高校の12年生プログラムとファンデーション・プログラムの違い
ファンデーション・プログラムは機能的にはオーストラリアの12年生プログラムの授業内容とほぼ同じようなものが行われます。しかし、これら2つ教育には次のような違いを見ることができます。
● 12年生プログラムはその成績がオーストラリアのすべての高度教育機関が入学条件の基準として認めています。一方ファンデーション・プログラムでは、あらかじめ特定の学士コースの進学先を手配し、成績によって入学が保証されるという形を取っています。
● 12年生プログラムはオーストラリア人学生のクラスに留学生が入って勉強する形を取りますが、ファンデーション・プログラムは通常留学生だけのコースとなります。
● 12年生プログラムは大学学士コースと組み合わされていませんが、ファンデーション・プログラムは留学生が希望する大学学士コースの専攻と組み合わされたもの(パッケージ)が多くあります。
● 12年生プログラムはオーストラリア人学生の様々な進路に合わせて作られていますが、ファンデーション・プログラムは留学生が高度教育機関へ進学するためにつくられています。
● ファンデーション・プログラムでは学生のアカデミック英語、コミュニケーションや文化の違いなどを習得する授業がありますが、12年生プログラムではこのような授業を行っていません。
● 12年生プログラムは学生の希望によって選択できる大変幅広い科目がありますが、ファンデーション・プログラムは大学学士コースに合わせた科目に絞られています。
● 12年生プログラムは教室での学習を中心としていますが、ファンデーション・プログラムは講義や個別指導などによる大学のような学習方法を中心にしています。
● 12年生プログラムは学校生活(制服や課外授業、スクールキャンプ等)を行うことに重点を置いていますが、ファンデーション・プログラムは一般に大人のカレッジ(大学のような)環境です。
● 12年生プログラムは通常16〜18歳の学生ですが、ファンデーション・プログラムは17歳〜20歳代の大人の学生が中心となります。
● 12年生プログラムは州政府の教育省によって行われていますが、ファンデーション・プログラムの中でも大学に関連している機関の場合は大学施設の利用、大学スタッフによる授業、大学による進学した学生の状況把握などが行われています。
ファンデーション・プログラムの認証
このファンデーション・プログラムの認証については大学によって大きく異なっています。多くの大学は修了者に対し大学入学を保証していますが、これはケースバイケースでファンデーション・プログラムによるのです。
一般的にはグループオブエイト(8大学グループ)と呼ばれる大学グループ(
シドニー大学、ニューサウスウェールズ大学、クイーンズランド大学、メルボルン大学、オーストラリア国立大学、アデレード大学、西オーストラリア大学、モナッシュ大学
)のファンデーション・プログラムはほとんどのオーストラリアの大学で認知され、入学受け入れを認められています。しかし、他のファンデーション・プログラムでは非常に優秀な成績を収めた学生以外はグループオブエイトに入学することは難しいかもしれません。
※ グループオブエイトと呼ばれる上記の8つの大学はオーストラリアでトップレベルの大学で世界大学ランキングでも上位に名を連ねる名門大学です。
ディプロマ・プログラム
それぞれのVET(職業教育機関)では様々なディプロマ・プログラムを設定していますが、留学生の場合はディプロマ・プログラム自体の資格取得よりも、大学進学のパスウェイとしてディプロマを取るケースも多く見られます。特にビジネスやインフォメーション・テクノロジーは人気が高い分野です。
これらのコースはTAFE、私立専門カレッジ、大学などで大学学士課程入学のために、または大学の学士コースと組み合わせたものとして募集されています。よく見受けられるケースとして、ディプロマを修了した学生が大学のビジネスコース(学士課程)の2年次へ編入することができるというものです。
このような方法は、大学学士コース入学条件に合致していない学生が大学進学を目指す代替パスウェイとして用意されていると言えるでしょう。つまり、この方法はファンデーション・プログラムに入学する学生と同様の学歴で別の道があることを示しています。
ディプロマ・プログラムとファンデーション・プログラムの違い
大学はディプロマ・プログラムを修了した学生に単位を認めています。そして、ディプロマ修了者が大学学士課程の2年次へ編入しています。ディプロマ・プログラムはファンデーション・プログラムよりも長いコース期間ではありますが、この単位認定によって、大学学士コース修了までの期間はファンデーション・プログラムから進学するよりも短い期間にすることが可能になるわけです。
これ以外にもファンデーションとの違いがあります。
● ファンデーション・プログラムでは必ずしも資格を得られるとは限りませんが、ディプロマ・プログラムでは常にディプロマ資格を取得できます。
● ファンデーション・プログラムの多くは、パートナーとなっている特定の大学のほとんどの学士コースへ進学する道がありますが、ディプロマ・プログラムではファンデーション・プログラムに比べると科目が限定されているために進学する専攻は限定され、進学分野が少なくなります。多くはビジネスコースやITコースになります。
● 有名大学の多くがファンデーション・プログラムを進学のためのパスウェイとして認証し、薦めています。一方でディプロマ・プログラムからの進学に対し、有名大学の多くは単位認定をあまり出しません。そのため有名大学への進学を希望する留学生にとって、ディプロマ・プログラムをパスウェイとする進学ルートはあまり魅力的ではないという事情があります。有名大学の多くがディプロマ・プログラムから学士コースへの進学ルートに消極的で、そのような進学関係を作りたがらない現実があります。
ディプロマ・プログラムは留学生にとってとても重要な進学経路です。そして、ディプロマ・プログラムを促進している大学でもファンデーションからのパスウェイは残っていくでしょう。このファンデーションという選択肢は特にビジネスやITコース以外の分野のために必要だからです。