日本の団体研修企画者へ
オーストラリアの団体研修、短期留学、長期留学、単位認定留学等の企画・運営をされています日本の学校や団体の担当者の方々へ、研修の留意点についてご案内致します。
研修の企画について
シドニーの語学学校で団体語学研修のプログラム作成や団体受け入れを経験しましたが、研修を企画される際の注意点について気づいた点をお伝えしたいと思います。
団体研修の実施時期
日本の団体語学研修の場合は7月から8月の夏休み時期に集中します。
特に夏休み前半は集中する時期で学校の教室もホームステイも満杯の状態になります。教室もホームステイも数に限りがありますので、予約を早めにしなければなりません。通常は実施の1〜2年くらい前に準備をしています。団体語学研修は継続性が高いので、毎年同じ学校や団体からほぼ同じくらいの人数が来られます。そのため継続している団体の予約を優先し、新しい団体は空きがでた段階で受け入れるという形を取っています。ですから、夏休みに企画される場合はかなり早い時期から企画し予約されることをおすすめします。特に研修内容の満足度が高い語学学校では新たな受け入れが難しい場合があります。
このような状況から、実施時期をずらす方法が重要と考えます。日本の夏休み時期は日本人学生が多く、ホームステイも満杯ですので、むしろ時期をずらすほうがより充実した語学研修を実施できるでしょう。
また、日本の冬休み時期はオーストラリアのクリスマス時期になりますため避けるほうが賢明です。この時期は教室数は問題ありませんが、ホストファミリーのほとんどが家族で過ごしたり旅行に出かけるため、受け入れ家庭が非常に少なくなるからです。また休日が多いのもこの時期の企画の問題点です。
団体研修の期間
実際に行われている研修期間は1週間〜3週間がほとんどだと思います。理想的には3週間くらいですが、少なくとも2週間は欲しいところです。その理由は余り短期間では十分な体験ができないからです。ホストファミリーの人との交流を深めたり途中で観光を組み入れたりするには週末(土日)をはさんで余裕のある日程を組む必要があります。また、ある程度成果を期待する実践的な英語研修をする場合は4週間くらいが理想的です。
予算の問題があると思いますが、質の高い研修内容をご検討いただくとよいでしょう。
研修の要素
語学研修の組み立てられている要素は①英語授業②アクティビティ③ホームステイの3点です。この中で最も長い時間過ごすホームステイは大変重要な要素です。ホームステイをしっかりケアできる体制の受け入れ団体と組むことをおススメします。
次に重要なものは英語授業です。目的が語学研修ですから英語授業をどう行うかはプログラムの大きなポイントになります。年齢層が低い場合や英語レベルが低い場合は企画されている日本のグループのみでクラスを編成するクローズドクラスと呼ばれる方法を取ります。この場合は日本の授業と同じようになりますが、教師はすべて英語で授業を進めます。また年齢層が高く、ある程度英語力がある場合にはインターナショナルクラスと呼ばれる通常の留学生のクラスに入り込む方法を取ります。インターナショナルクラスは英語レベルに分かれていますので、最初に英語テストを行い、ひとりひとりの英語力を判定してばらばらにクラスに入っていきます。他国の学生と一緒の勉強しますので、より留学らしい雰囲気を体験できるでしょう。これらのクラス編成については事前によく検討されることをおすすめします。特に年齢層が低い場合は集中力の問題がありますし、大人のクラスに入れるわけにはいきませんので、年齢層の低い専門のクラスを持つ語学学校と企画をすすめなければなりません。
アクティビティはせっかくオーストラリアに行くのですから教室の授業だけではもったいないので、積極的に組み入れるとよいでしょう。通常は午前中に英語授業を行い、午後にアクティビティを入れます。アクティビティは午前中に担当した英語教師が引率し、観光要素やスポーツ、現地の人々と触れ合う企画などが組み込まれます。また、週末の1日は企画されている団体全員でバスをチャーターして1日観光を組み入れます。例えば土曜日はホストファミリーと一緒に過ごし、日曜日は団体で観光に出かけるといった感じです。
理想と現実
最近はインターンシップやボランティア活動を組み入れたいという希望が多く見られます。しかし現実には大変難しい問題があります。このような現地の方々と共に活動する企画には参加する学生の高い英語力が必要になるからです。インターンシップなどの手配条件は通常は中級の上レベル〜上級レベルの英語力が必要です。企画する方も受け入れる側も素晴らしい体験をしてもらいたいと願っていますが、残念ながら現実には英語力の問題が大きく関係してきますので、ご理解いただきたいと思います。
また、日本とオーストラリアのビジネス習慣の違いがあるかもしれません。日本はとても時間に正確で何事もスピーディに対応しますが、オーストラリアでは時間の流れ方が違います。日本とオーストラリアの間に立つ日本人にとって困る事は、オーストラリアの教育期間や団体等とのやり取りではすぐに回答をもらえないことです。また、担当者によって回答が異なる場合があり正確な情報を得る事すら難しい場合があります。このような事情から、企画段階や準備段階から実際の研修中に至るまで日本の引率者の方々に苛立たせてしまうことがあります。原因のひとつは問い合わせの段階では正確なことは何も言えないというオーストラリア側の考えがあることです。確実に実施するとなれば熱の入り方が違うという現実があるのです。特に教育分野では競争原理(見積り競争など)があまり働いていないので、企画には十分な準備時間と研修を確実に実施するという確約が必要であることがわかります。
ホームステイについて
ホームステイは一般家庭でオーストラリアの人々と直接交流できる素晴らしい体験です。このような体験は通常の観光旅行では望めません。おそらく学生の多くはこのような強烈な体験が英語に興味を持つきっかけになるでしょう。研修の一番重要な要素に挙げましたが、ホームステイは問題が最も多い部分でもあります。それはホテルのように画一のサービスを行う事ができない宿泊方法だからです。特に団体研修の場合には学生同士がそれぞれの見ていない家庭を話しながら比較して優劣を感じます。また多くの学生はホストファミリーに何かをしてもらうことをじっと待つような態度をしてしまいます。ホストファミリーはホテルスタッフのようにサービスを行う立場ではありませんので、滞在する学生も交流に努力しなければならないことを理解する必要があります。ホームステイについては事前のオリエンテーションで十分に理解してもらうように繰り返すことが重要と思います。
また、企画者の意図として、しっかり英語を勉強するために、あるいは自立心を養う等の目的もあって一人一人別々のホームステイに滞在する希望をされる場合があります。しかし高校生くらいまでの年齢ではひとりで滞在することはかなり無理があると言えるでしょう。個人差がありますので、団体研修の場合はひとりで行動できる学生に合わせて企画しますのは難しいと思われます。特に通学は公共交通機関を利用しますので、途中で迷う学生も出てきます。
尚、引率者はホテル滞在するほうがよいでしょう。費用の節約や英語の勉強のために引率教師がホームステイを希望される場合がありますが、ホームステイ滞在は緊急時対応に向いていません。ホテルやホリデーアパートメント(コンドミニアム)に滞在して緊急時に出動できる体制を取っていただいたほうがよいでしょう。
安全とサポート体制・緊急連絡先について
団体研修の実施時は引率者が大きな責任を負っていると思います。特に参加者の安全をどのように確保するかという問題は研修の要になるでしょう。学校に集まって英語授業やアクティビティを行う時間帯は集団行動ですから問題はありませんが、通学時やホームステイの時間帯、そして週末は各参加者に連絡が取れる体制が必要になります。
通常、学生が持つ緊急連絡先は①語学研修の受け入れ先担当者の緊急電話番号、②引率者の緊急電話番号、③ホームステイの連絡先の3種類が渡されます。①はホストファミリーの緊急連絡番号でもあります。それぞれが連携して学生をサポートする体制が企画時のポイントになると思います。
また、オーストラリアは治安がよく、安全な国と言われていますが、参加学生ひとりひとりが自分で身を守ることについて考えていただくとよいでしょう。
オリエンテーションについて
語学研修では繰り返しオリエンテーションを行うと思います。出発前に行うオリエンテーションでは数回に分けて、心得えや手続き、準備内容について案内されるでしょう。また到着時にもオリエンテーションを行うのが一般的です。これらのオリエンテーションの中で取り上げていただきたいのは、①ホームステイの過ごし方、②安全な滞在の心得え、③サバイバル英語についてです。
サバイバル英語とはホストファミリーとの挨拶や質問の仕方、道に迷った時の英語、買い物の英語です。滞在が始まるとすぐに必要となるこららの基本的な英語は単語を並べるだけでもよいのであらかじめ勉強してもらいたいと思います。
ここにご案内しました内容は、受け入れを経験しました立場からの気になる点でございます。企画段階では様々なお考えがあり、どうしても理想的な内容や他と違ったユニークなものを作りたくなりますが、実際にはしっかりと現地事情と擦り合せて研修内容を決めていかなければならないと感じます。
語学研修の成功の鍵は準備にあると思います。
オリエンテーションを通じてひとりひとりの学生に観光旅行とは違う語学研修を理解してもらい、自らの力で積極的に貴重な体験を楽しんでもらいたいと思います。
学校関係者の方々はお忙しい中で語学研修の企画に悩まれていると思いますが、参考にしていただければ幸いです。
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